お金を借りるには借用書があると安心!書き方と3つの注意点

「どうしてもお金が必要だけど、借用書が無いと貸してもらえない」

「金銭のやりとりでトラブルになるのがこわい」

こうした悩みを抱えてはいませんか?

お金の貸し借りには様々なトラブルがつきまとい、高額な金銭のやり取りを口頭だけで行うのは危険です。

貸す側も何か証明になるものがないと、安心してお金を貸せません。

そこで、金銭のやり取りがあった事実を証明するのが「借用書」です。

「借用書」には、貸主と借主が安心して金銭のやり取りができる証明書の役割があります。

ここでは、「借用書」の作成で困っている方へ、「借用書」に書くべき内容や書き方、注意点について、わかりやすくご紹介します。

「借用書」って何?お金を借りるときにトラブルを回避する重要な書類

お金がなくて誰かに借りるとき、お金を借りたことを証明するために「借用書」を作成します。

借用書には、誰が誰にお金を借りたか、いつ返済するのか、といった内容が記載されるため、お金を貸す側にしてみれば、安心材料であり証明書でもあります。

もし、借用書を作成しないまま、お金の貸し借りをしてしまった場合、お金を借りた事実が曖昧になってしまい、しっかりと返済されない場合もあるのです。

「ずいぶん前に貸したお金だけど…」と切り出しても、お金を貸した人に「何のこと?」と言われてしまえば、どうしようもなくなってしまいます。

返済が滞ってしまう場合、通常は私文書として扱われる「借用書」を公文書にしておくことで、差押えなどの手順に進みやすく、まとまったお金を回収できる可能性があります。

(「借用書」を公文書にする手順については、『より借用書の効力を高めるなら公正証書として作成しよう』の項で詳しくご紹介します。)

金額が多くても少なくても、この「借用書」があれば、お金の貸し借りに関わるトラブルを回避できる可能性が高くなります。

「借用書」と「金銭消費賃貸契約書」との違いを知っておこう

「借用書」と同じ効力を持つ書類として、「金銭消費賃貸契約書」というものがあります。どちらも「お金を貸した」、「お金を借りた」という事実を証明するための書類ですが、作成方法が変わります。

「借用書」を作成する場合は、借主(お金を借りる人)が作成と署名を行い、貸主(お金を貸す人)が預かります。

「金銭消費賃貸契約書」を作成する場合は、借主と貸主の両者が、作成と署名を行い、両者が1通ずつ保管します。

「借用書」はお金を借りたい人が自分自身で1通の書類を用意すれば良いのに対し、「金銭消費賃貸契約書」は、お金を借りたい人もお金を貸す人も、共同で2通の書類を作成するということになります。

まとめると以下のようになります。

借用書 金銭消費賃貸契約書
作成書類数 1通のみ 2通
署名を行う人 借主のみ 借主と借主どちらも
保管先 貸主 借主と貸主1通ずつ

急いでお金を借りたいときや、手間を掛けたくないときは、「借用書」の方が簡単に作成できることがわかります。

それでは、「借用書」の作成方法について詳しく見ていきましょう。

借用書はどうやって作成するの?書き込むべき項目

個人間で行うお金の貸し借りなら、手書きでも簡単に借用書が作成できます。

ただし、お金の貸し借りに関する「証明書」であることを念頭に置き、書き込むべき項目をしっかりと書いておく必要があります。

借用書に書き込むべき項目として、以下のものがあげられます。

【借用書の内容 書き込んでおくと良い項目】

  • 借用書の作成日
  • 貸主の氏名
  • タイトル
  • 「お金を借りた」という事実
  • 借りた金額
  • 利息の取り決め
  • 返済期日
  • 返済方法
  • 延滞時の動き
  • 借主の氏名(署名)・住所・押印
  • 収入印紙

それぞれの項目について、詳しく見ていきましょう。

【借用書の作成日】
お金の貸し借りがあった日を作成日として記載します。

できれば、銀行振込みなどで金銭授受の記録が残るようにしておくと間違いがありません。

【貸主の氏名】
氏名の署名は、できれば本人の直筆が望ましいです。「本人の意思で契約をしている」という証明になります。

【タイトル】
書式の一番上の部分に、「借用書」と書きます。

【「お金を借りた」という事実】
(借主)○○が(貸主)○○からお金を借りたという事実を、明確に記載します。

○○には本人の氏名、もしくは書面で取り決めた乙、または甲として記載します。

【借りた金額】
借りた金額を記載する場合は、大字と呼ばれる漢数字で記載します。

これは、普段使い慣れているアラビア数字では、書き足しや変更がしやすく、改ざんのおそれがあるためです。

借用書に記載する大字について、以下の表で確認しておきましょう。

読み アラビア数字 大字
いち 1
2
さん 3
4
5
ろく 6
しち 7 質、柒、漆
はち 8
きゅう 9
じゅう 10 拾、什
ひゃく 100 陌、佰
せん 1,000 阡、仟
まん 10,000
じゅうまん 100,000 壱拾萬

【利息の取り決め】
利息とは、お金を貸した人が、利用料としてもらえる報酬です。個人間でのお金の貸し借りでは、利息について決めておかなければ、無利息になります。

利息を取りたいのであれば、貸主と借主で取り決めを行い、借用書に記載する必要があります。

ただし、「利息制限法」で定められている上限金利を超えないように注意しましょう。

利息制限法の上限は以下のようになっています。

元金 利率
10万円未満 年率 上限20%
10~100万円未満 年率 上限18%
100万円以上 年率 上限15%

もし、上記の利息制限法に定められた上限金利上回る場合、上限を超えた分は無効になります。

【返済期日】
返済期日は、貸主と借主の間で合意があれば記載しなくても、「借用書」として成り立ちます。

しかし、明確な期日を決めておかなければ、返済が滞ってしまうおそれがあります。

「返済期日 令和○○年○○月○○日」というように、具体的な日にちを設定して記載しておくことをおすすめします。

【返済方法】
返済方法には、現金受け渡しや銀行振込みなど、さまざまな方法があります。

また、一括返済か分割返済かも両者の間で意思を合わせておきましょう。

返済方法を記載しない場合は、返済金額を持参し、借主が貸主のもとへ出向いて返済します。

銀行振込みや分割払いでの返済にする場合は、以下の内容も確認しておきましょう。

  • 振込先の銀行名
  • 振込先の口座番号
  • 返済の間隔(月に○回など)

【延滞時の動き】
返済が遅れた場合、延滞時の動き(遅延損害金はどうするか)について決めておくと安心です。

遅延損害金は、返済期日よりも返済が遅れてしまったときに発生する利息です。

「利息制限法」では、遅延損害金の利率の上限について定められています。

元金 利率の上限(年)
10万円未満 29.2%
10万円以上100万円未満 26.28%
100万円以上 21.9%

もし、延滞時の動きについて取り決めを行わず、借用書に記載しなかった場合は、民法第404条により年に5%の利率が設定されます。

【借主の氏名(署名)・住所・押印】
借用書はパソコンで手軽に作成できますが、氏名や住所は本人が記入するようにしましょう。

これは、借用書の偽造を防ぐためです。

すべてパソコンで作成した文字だと、署名も金額も簡単に書き込むことができ、偽造されるおそれがあります。

氏名や住所、金額は、できれば自署で作成するようにしましょう。

【収入印紙】
貸し借りをする金額が1万円以上の場合、作成した借用書には収入印紙を貼ります。

収入印紙とは、課税文書(領収書や保険証券など)の書類に貼る税金を納めるための証票です。

万一、収入印紙を貼り忘れてしまっても、お金の貸し借りはできますが、印紙税法に違反します。

罰則として、本来納付するはずだった印紙税額に加えて、その2倍の額を過怠税として支払うことになります。

つまり、印紙税額の3倍の金額を取られることになるのです。

必要な収入印紙の額を確認して、忘れずに貼るようにしましょう。

貸し借りする金額 収入印紙の額
1万円未満 非課税
10万円以下 200円
10万円超、50万円以下 400円
50万円超、100万円以下 1,000円
100万円超、500万円以下 2,000円
500万円超、1,000万円以下 1万円
1,000万円超、5,000万円以下 2万円

最寄りのコンビニや郵便局で購入できるので、上記の表で金額を確認して手に入れるようにしましょう。

ここまでが、借用書に記入するべき内容です。

もしものトラブルに備えて、しっかりと書き込むようにしましょう。作成にあたっては、作成上の注意点にも目を通しておくことをおすすめします。

証明書として機能させるために気をつけたい!借用書を作成するときの注意点3つ

 

借用書を作成する場合、前項で取り上げた内容を記入しておけば借用書として有効に機能します。

ただし、以下の注意点に気をつけるようにしましょう。

  • 改ざんを避ける努力をする
  • 貸主と借主のどちらかが著しく不利な項目を書かない
  • 未成年者など制限行為能力者との契約は避ける

それぞれの注意点について、詳しくみていきましょう。

注意点1 改ざんを避ける努力をする

借用書作成には、決まった形式がないので、手書きでもパソコンでも簡単に作成することができます。

簡単に作成できても、互いの約束事を証明する大事な書類です。

特に借用書の場合は、「金銭消費賃貸契約書」と違って、貸主が1通のみ保管するため、悪意のある人には改ざんされてしまうおそれがあるのです。

「金銭消費賃貸契約書」のように、同じ書面を2通作成して両者が保管するなら、改ざんしにくく改ざんされても気づきやすいという特徴があります。

「借用書」は改ざんのおそれを極力少なくできるよう、大字を活用したり字と字の間を空けすぎたりしないように気をつけましょう。

注意点2 貸主と借主のどちらかが著しく不利な項目を書かない

お金の貸し借りでは、貸主側が優位に立つイメージを持ちやすいもの。

だからといって、貸主が有利で借主が不利となる項目を盛り込んでいると、その契約自体が無効になってしまいます。

「お金を貸すんだから、言うことにはすべて従ってもらう」など、借主に対して著しく不利な項目や、どちらか一方が不利になる項目は書かないように気をつけましょう。

注意点3 未成年者など制限行為能力者との契約は避ける

借用書の内容は、お金の貸し借りに対する契約です。

契約を行う場合、契約する相手が「契約を結べる相手かどうか」を見極める必要があります。

「契約を結べる相手かどうか」というのは、「契約を結べる能力を持っているかどうか」で判断します。

もし、契約を結んだとしても、相手が契約を結べる能力を持っていない場合、その契約は無効となってしまいます。

お金の貸し借りに関しては、「制限行為能力者」と結んだ契約は、無効となります。

「制限行為能力者」には、以下の人が当てはまります。

  • 未成年者(満20歳未満の者)
  • 成年被後見人(精神上の障害により、家庭裁判所から後見開始の審判を受けた者)
  • 被保佐人(精神上の障害により、家庭裁判所から保佐開始の審判を受けた者)
  • 被補助人(精神上の障害により、判断能力が不十分な者)

未成年者であれば保護者、成年被後見人であれば成年後見人というように、「制限行為能力者」との契約には、保護する人の同意が必要です。

より借用書の効力を高めるなら公正証書として作成しよう

個人で作成した借用書には、以下の効力があります。

  • 契約内容の確認
  • 返済がされないときに裁判を起こす

貸し借りの金額がいくらだったのかを確認したり、返済期限はいつだったかを確認したりすることができます。

また、返済がされないときには、借用書を証拠として裁判を起こすことが可能です。

裁判で勝訴判決が下り、債務名義(強制執行を作動できる文書)を得れば、借主に対して差押えを行うことができます。

これらは、借用書を「私文書」として扱った場合の効力です。

一方、借用書を「公文書」として扱った場合はどうでしょうか。

「公文書」にした借用書には、以下の効力があります。

  • 契約内容の確認
  • 返済がされないときに差押えなどの強制執行ができる

契約内容の確認については、「私文書」である借用書と変わりませんが、返済がされないときに裁判を起こさずに取り立てられる点で違いがあります。

このように、「公文書」にした借用書の方が、効力が強いことがわかります。

より効力の強い「公文書」にすることで、返済がされないときにスムーズに対応できると言えるでしょう。

借用書を「公文書」にするにはどうしたらいい?

借用書を「公文書」にするには、公証役場で公証役人に作成してもらいます。

公証役場は市区役所と違って、全国約300カ所に設置される法務局管轄の機関です。法律実務経験の豊かな公証役人が文書作成を行います。

公証役人が作成した公文書は「公正証書」と呼ばれ、法律上完全な証拠として認められます。

公文書(公正証書)の作成には、以下の手間や費用が必要です。確認しておきましょう。

  • 貸主と借主、連帯保証人が公証役場に出向く
  • 作成手数料や収入印紙代、正本・謄本代などの費用がかかる

公正証書の作成手数料は、以下のようになっています。

100万円以下 5,000円
100~200万円以下 7,000円
200~500万円以下 11,000円
500~1,000万円以下 17,000円
1,000~3,000万円以下 23,000円
3,000~5,000万円以下 29,000円

(以下略)

効力の高い公正証書にするために、契約に関わる人達で作成を行うことや、諸費用がかかることを覚えておきましょう。

借用書を準備してトラブル回避!できれば効力を強めておこう

借用書が持つ効力や作成方法、記載内容についてご紹介しました。

お金の貸し借りをする際は、トラブルを避けるためにも「借用書」を準備してから行いましょう。

信頼できる人や身内と貸し借りを行う場合も、「借用書」があれば、より強い安心感を得ることができます。

貸主は、返済期日を過ぎてもお金が返済されない場合は、貸し借りの事実を証明する「借用書」で裁判を起こすことが可能です。

裁判なしで差押えなどの強制執行を行うためには、公文書にして「借用書」の効力を強めておきましょう。

万が一のトラブルに備えて、しっかりと準備しておけば、「借用書」は心強い証明となってくれることでしょう。