寒くなり乾燥する季節になると、体調管理には気を付けていても思いがけず体調を崩してしまうことがあります。
特にインフルエンザなどの感染症は、早期治療が効果的なため早めの受診が一番です。
しかし薬代や受診料など病院にかかるには意外とお金がいるため、医療費が負担で気軽に受診出来ない方も多いと思います。
そんな時でも、実は無料低額診療施設なら無料もしくは低額で受診をしてもらえるのです。
本記事では、そんな無料低額診療施設の受診方法や休業中にもらえる手当て、市販薬で治した場合の節税対策など、お金がないときに知っておきたいちょっとしたポイントを解説していきます!
インフルエンザは48時間以内であれば抗インフルエンザ薬が効くと言われており、早めの受診が推奨されています。
しかし、健康保険などで7割は負担されるとは言え、自己負担分や薬代などの支払いが難しく病院の受診を躊躇する方もいると思います。
そんな時に利用できるのが、医療費を減額・免除できる「無料低額診療制度」です。
無料低額診療制度は、保険証を持っていなかったり、失業や病気・怪我で一時収入のない方、低所得者などのお金がない方でも治療を受けられるように、自己負担金や一部負担金を減額・免除してくれる制度です。
都道府県に届け出を出して受理された医療機関で受けることが出来、現在この事業に取り組んでいる無料低額診療施設は全国に687件(2017年、厚生労働省調べ)あります。
主に済生会病院や全日本民医連、日本医療福祉生協などに加盟する病院などが取り組みを進めており、どの都道府県にも必ず1つは該当医療機関があります。
いざ病気にかかった時も、自分の住んでいる地域の無料低額診療施設をあらかじめ調べておけば安心です。
取り組んでいる医療機関は、お住いの市や県の名前を入れてインターネットで検索するか、市町村や都道府県のホームページ内で該当医療機関を紹介しているところもあるのでぜひ調べてみて下さい。
では、無料低額診療施設はどのように利用すれば良いのか、以下より順を追って説明していきます。
まずは無料低額診療を実施している病院や診療所に相談します。
ホームレスやネカフェ難民、外国人、DV被害者、低所得者など経済的に医療機関が利用できない方が対象ですが、減免を受けられる収入などの基準は個々の医療機関にゆだねられています。
大体の場合、収入が生活保護基準の150%以下などのある一定の基準を内部で設けているのが一般的ですが、実情に応じて柔軟に対応してくれます。
相談して結果が出てから診療となる場合もありますが、インフルエンザや風邪などすぐに治療が必要な場合はまず先に必要な治療をしてから必要な手続きなどに進むことが多いです。
その場合は普通の病院同様、電話などで相談ついでに予約をし、治療を受けることになります。
制度の適用の有無にかかわらず治療は受けられるので、まずは安心して相談してみて下さい。
初回の相談時か治療後に、制度が適用出来るか医療ソーシャルワーカーなどの担当者と面談を行います。
先にも述べたように、無料低額診療制度の適用の基準は各医療機関にゆだねられています。
これらの資料と面談の際に聞いた事情なども考慮して、会議などで適用の有無を決定することとなります。
制度の適用の有無が決定されたら、結果が通知されます。
この時、制度が適用されなくても治療の支払いの他、当面の生活なども含めて担当者が一緒に打開の道を探してくれます。
実は無料低額診療制度は、治療に限らず生活や福祉に関する悩みを聞き、生活のサポートも行ってくれることが特徴です。
そのため、他の公的制度の利用が可能な場合はそちらを勧めてくれることもありますし、分割払いなど生活に困らないような代替案を出してくれるので安心してください。
また、制度が適用となってもこれはあくまで生活が改善するまでの一時的な措置です。
無料低額診療制度が適用となる期間も短くて1ヶ月、長くて半年~1年など期間が決められていることが多く、その間に担当者と生活改善を図っていくこととなります。
診療と生活支援をどちらも行ってくれるので、病院にかかりっぱなしで終わりというわけではないのが心強いですね。
そんな支援の手厚い無料低額診療制度ですが、注意すべき点もあります。
それは、無料低額診療制度で無料や低額になるのは病院の診察代のみで、院外処方の薬代や治療材料、診断書などは適用外となることが多い点です。
無料低額診療は民間事業のため、制度適用の判断基準もそうですが適用の範囲も病院に任されており、中には病院が立て替えている事例もあります。
なので、自治体や病院によっては薬代などを負担してくれるところもありますが、それらは患者の自己負担としている医療施設も多いのです。
これらは病院や診療所でも対応が分かれるので、心配な方はあらかじめ確認や相談をしておきましょう。
また、近年無料低額診療の届け出を出している医療機関は増えてきているとはいえ、まだまだ地域で施設数に偏りがあるのが現状です。
夜間・休日診療や入院施設の有無などもあるため、いざという時慌てないためにも、最寄りの無料低額診療施設はどこか調べておきましょう。
病気やケガで心配なのは治療費だけではなく、休んでいる間の収入などもあると思います。
特にインフルエンザなどは熱が下がってもしばらく休む必要があったり、ケガなどで入院が必要となった場合、有給休暇などでは補填しきれないことも…。
しかし、そんな業務外の病気やケガで会社から十分な給料が受けられない時、請求できる給付金があります。
傷病手当金は、休業中に被保険者本人や家族の生活を保障するために作られた制度です。
フリーランスや自営業の方が加入する国民健康保険にこの制度はありませんが、会社員などで健康保険に加入している被保険者本人であれば申請をすることが可能です。
ここからは、傷病手当金の詳細や申請について詳しく説明していきます。
傷病手当金が支給される条件は以下の4つです。
1番と2番の条件は分かりやすいと思いますが、3番目の「連続する3日間を含み4日以上」という条件は要注意です。
休み始めて最初の3日間は「待機」と呼ばれ、この待機3日間を経て4日目の休業分から傷病手当金を受け取れるようになります。
連続して3日休んだ上でそれ以降の期間からしか傷病手当金はもらえないので、3日間や2日間などの短期の休みでは給付はもらえないということになります。
ただし、この待機の期間は有給休暇や土日祝日などの公休日も含んで良いことになっており、実際に給与の支払いがあったかどうかは関係ありません。
つまり、土日休みの仕事で火曜日から連続して休んだ場合は金曜日からしか給付を受けることが出来ませんが、月曜日から連続して休んだ場合、その前の土日も待機の期間に含めることが出来るため火曜日の休職分から給付を受けることが出来ます。
さらに、待機は連続して3日間休んだ期間があれば良いので、3日間休んだ後2日間出勤し再び2週間休んだといった場合でも、待機の3日間の条件は満たしているため2週間分まるまる給付を受けることが可能です。
この待機の3日分だけは傷病手当金を受け取ることが出来ないので、有給休暇が残っている場合はこの間の補填に充てると良いでしょう。
また条件の4番目は、傷病手当金は休業期間の生活を保障する制度のため、休んでいる期間にも有休休暇などを利用して給与の支払いがあれば受け取ることが出来ません。
ただし、支給されるべき傷病手当金より給与の方が安い場合はその差額分の支給を受けることが出来ます。
気になる方は、以下で紹介する支給金額の計算式で計算してみるか、加入している健康保険の相談窓口などに相談をしてみて下さい。
傷病手当金の1日あたりの支給額は、「支給開始日以前の継続した12ヶ月間の標準報酬月額を平均した額÷30日×2/3」という計算式で求められます。
もし支給開始までの勤務期間が12ヶ月に満たない場合は、次のどちらか少ない方を元に算出されます。
つまり、月収のおよそ2/3ぐらいの金額をもらえると考えてよいでしょう。
ただし、この計算式の月収はボーナスなどの賞与は考慮されません。
そのため年収で考えると、これまでの収入の2/3を下回る可能性もあることを考慮に入れておきましょう。
逆に言えば、この傷病手当金の受給期間中に会社から賞与が支給されても給与とは見なされないため、傷病手当金が打ち切られたり減額されることはありません。
では、いよいよ気になる傷病手当金の申請方法ですが、申請書類は加入している健康保険の公式ホームページなどからダウンロードをすることが出来ます。
詳細が分からない場合は、勤務先の担当者に相談してみましょう。
提出する必要のある書類は主に以下の4枚です。
休業の理由や状態によっては上記以外にも書類の提出を求められる場合もあるので、記入例やホームページの添付書類の項目はあらかじめ確認しておきましょう。
申請書類を送ってから大体2週間ほどで、書類に記入した口座に傷病手当金が振り込まれます。
ただし、傷病手当金は実際に休んだ期間を申請する必要があるため、基本は事後申請になります。
そのため、給付されるのは収入が途絶えた後になり、加入している健康保険によっては支給までに2~3ヶ月かかったという場合もあります。
このようにもらえるまで時間がかかるので、長期で休職する必要がある時は1ヶ月単位で申請手続きをしていくことをオススメします。
また、傷病手当金をもらえる期間は支給開始した日から最長1年6ヶ月です。
これは、支給開始から途中で仕事に復帰した期間があったとしても、再び同じ病気やケガで休業した場合その仕事に復帰した期間も含めて1年6ヶ月ということです。
支給期間に延長はなく、1年6ヶ月を超えた場合はその時点で仕事に復帰できる状態ではなくとも、傷病手当金は支給されません。
しかし、同じ病気でも一度治って再発などをした場合は別の病気として支給期間が延びるので、その場合は再度申請可能となっています。
傷病手当金の支給条件として給与の支払いの有無が挙げられていましたが、以下の手当てなどをもらっている方も支給が停止されることがあります。
つまり、給与代わりに何か補償や補填がある場合も傷病手当金は支給対象外になるということです。
ただし、給与の時同様支給されるべき傷病手当金よりもらえる金額が少ない場合は差額を支給してもらえますので、その場合は申請をしても大丈夫です。
また、傷病手当金は支給期間内に退職をした場合も引き続き期間満了までは受給することが出来ます。
しかし、そのためには以下の4つの条件を全て満たす必要があります。
あくまでも「在職中に傷病手当金の支給条件を満たしている人には継続して、もしくは申請すれば支給しますよ」というわけです。
ここで一番気を付けたいのは1番目の「退職日に出勤しない」という条件です。
退職日には最後の挨拶をしたり、自分の荷物を引き上げたりしに行きたい気持ちは分かりますが、ここで出勤してしまえば他の支給条件を満たしていても傷病手当金がもらえなくなってしまいます。
そのため、退職日については勤務先とよく話し合い、挨拶や片付けなどは前日までに済ませておきましょう。
病気やケガと言っても病院にかかったり長期間休むまでもなく、薬局やドラッグストアで買える市販薬などで治すことも多いでしょう。
実はそんな時も、一定金額を超えた分は確定申告をすることでお金が戻ってくることがあります。
それが「セルフメディケーション税制」と言い、健康診断など一定の取り組みをしていることを前提に、指定の市販薬や医師から処方された家族全員の薬代が年間で12,000円を超えた分、税金を控除できる制度です。
似たような制度で、家族全員分の治療にかかった交通費なども含め申請できる「医療費控除」があります。
しかし医療費控除は1年間で10万円以上かかった場合なのに対し、セルフメディケーション税制は12,000円からと対象となる方が意外と多いのが特徴です。
セルフメディケーション税制を利用するためには、年間の合計金額以外にも条件がいくつかあります。
まずセルフメディケーション税制は、「日ごろから健康増進や病気予防に努めている人」のための控除なので以下のような健康のための取り組みを行っている方が申請対象者となります。
セルフメディケーション税制を申請する際、これらの取り組みを行った証明として領収書や診断結果を求められることがありますので、確定申告までなくさないように保管しておいてください。
また、セルフメディケーション税制で対象となる医薬品は、「OTC医薬品」や「スイッチOTC」と呼ばれているものになります。
OTC医薬品は、従来は医師の処方箋が必要だった医薬品を、薬局などで購入できるよう一般転用されたもののことです。
胃腸薬や風邪薬、花粉症の薬のような抗アレルギー薬、湿布薬、眼精疲労や肩こりに効くビタミン剤など、テレビCMなどでもよく聞くような様々な薬がOTC医薬品に分類されています。
対象となる商品には、分かりやすく外箱などにセルフメディケーション税制の対象となるロゴマークがついていますが、中には付いていない商品もあります。
どの薬がセルフメディケーション税制の対象商品か分からない場合は、薬局の店員に訪ねるか、厚生労働省のホームページで公開されている対象品目一覧で確認をしましょう。
セルフメディケーション税制は家計を同一にする家族の購入合計額を合わせて申請して良いため、OTC医薬品を購入した際のレシートは家族でまとめて管理しておくことをオススメします。
OTC医薬品を年間で12,000円以上購入した場合、12,000円を超えた金額をセルフメディケーション税制で控除することが出来ます(上限88,000円まで)。
では、課税所得300万円の方が年間でOTC医薬品を40,000円分購入した際、どれぐらいお得になるのでしょうか?
まず控除額は12,000円を超えた分なので「40,000円-12,000円=28,000円」となります。
この控除額28,000円に税率をかけて求めた金額分、所得税と翌年度分の住民税から減税されるのです。
所得税の減税額は、課税所得195万円~330万円の方は税率10%となるので「28,000円×10%=2,800円」となります。
住民税も同じく税率は10%なので、「28,000円×10%=2,800円」となり、所得税と住民税の減税額を合わせると「2,800円+2,800円=5,600円」お得という計算になります。
この計算式で使用した所得税の税率は、課税所得によって変わります。
そのため自身の控除額が気になる方は、上記の計算式に当てはめる以外に、インターネット上にセルフメディケーション税制の簡単な計算ツールもありますのでぜひ参考にしてみて下さい。
セルフメディケーション税制は、会社で行う年末調整では申請できないため別に確定申告を行う必要があります。
確定申告は1月~12月までの1年分の関連書類をまとめ、翌年の2月16日から3月15日までにお住いの地域の税務署などで手続きを行うことになります。
また、医療費控除とセルフメディケーション税制は併用できないため、どちらか該当する方かよりお得になる方を申告するようにしましょう。
確定申告は紙の書類で提出する他、国税電子申告・納税システム(e-Tax)を利用してPCやスマートホンから申請することも出来ます。
書類の記載方法や必要書類が分からない場合は、国税庁のホームページの記入例を産書したり、所轄の税務署に相談したりも出来るので気軽に利用してみて下さい。
病気やケガでお金がないときに利用できる制度や対策のまとめです。
インフルエンザなどの病気やケガは、いくら気を付けていても完全に防ぐことは難しいです。
そんな時、お金の負担や心配事があると療養に専念できず、余計に休職が長引いてしまうことにもなりかねません。
そうならないためにも、今回ここで紹介した制度などを上手く活用し、いざという時でも安心して治療に専念していただければと思います。