ほんの数万円、お金を借りたいとき保険証のみでお金を借りられる金融業者は本当にありがたい存在です。しかし、令和2年4月からはそうした気軽な借り方はできなくなる可能性があります。
お金を借りるときに必要な本人確認が4月から厳格化されることが決定しています。法改正後も身分証明書として保険証は大きな効力がありますが、契約のオンライン化が進むことで個人情報が漏れやすくなるリスクも大きくなりました。
ここでもう一度、身分証明書としての保険証の重要性を学びなおすと同時に保険証を提出することの危険性についても考えでみましょう。
金融業者がお金を貸すときに重要視することの一つに「安定した収入があるかどうか」です。お金を貸すときに有利な職業は国家公務員、一部上場の大手企業の社員といわれています。たしかにこの人たちは安定した収入、または高収入があり貸し倒れのリスクはほぼないと思われます。
保険証は勤め先か、業界の組合が発行しています。保険証はその発行元がしっかりと明記されていますから、保険証を見ればその人の勤め先がはっきりわかります。
安定した大手企業や今後も発展が望める業界の保険証なら顔写真入りの身分証明書よりも有利な条件で借り入れができることもあるようです。
また、保険証からは勤続年数も知ることができます。保険証は取得年月日が明記されていますから、勤続年数がたちどころにわかってしまいます。大手企業や公的機関で長年働いていることがわかれば、それだけ有利な条件でお金をかりることができます。
大企業や公務員であることがわかれば、ちょっと敬遠したい電話での在籍確認が省かれることもあるようです。また、50万円以下の借入であれば保険証のみでお金が借りられる金融業者もあります。
上記のような理由で、フリーランスの仕事や自営業国民健康保険に加入している人は大企業の社員や公務員にくらべて不利になります。また、企業の健康保険に加入している場合でも、収入の低い派遣社員や契約社員は条件が悪くなります。
収入が低かったり不安定だったりする場合は、保険証だけでなく住民票や公的料金の領収書などほかの書類を追加で求められることがほとんどです。契約終了後の収入のあてがない、毎月安定した収入が得られないなど、公務員や正社員に比べて不安な要素が多いため、どうしても条件が悪くなってしまうのです。
保険証がお金を借りるときに有効な本人確認書類なのは間違いありませんが、保険証のみでお金を借りたり、クレジットカードなどの申し込みをするのは今後は難しくなるかもしれません。
というのも、令和2年4月1日から改正された犯罪収益移転防止法が施行されるからです。
犯罪収益移転防止法とは、マネーロンダリングやテロ資金供与など犯罪につながる資金調達を未然に防ぐことを目的に、特定の事業者が取引の手続きで本人確認の方法などについて定めた法律です。
主に非対面での本人確認の規定が大幅に変更になっています。
対象となるのは金融機関のほかに、貴金属取り扱い業者や電話受付代行業者、弁護士など多数の業界がこの法の影響を受けることになります。融資などの本人確認の必要な重要な手続きにはほぼこの法が適用されると思っていいでしょう。
金融業で犯罪収益移転防止法が適用されるのは以下の3業種になります。
すでに施行済のオンライン完結の本人確認方法が追加に関しては、スマートフォンのカメラで撮影した写真付本人確認書類や契約者本人の顔を撮影して送付することで契約が完了する「LIQUID eKYC」などを対象としています。
本人確認方法の一部厳格化にかんしては、金融機関、たとえば銀行では預貯金の口座開設や200万円を超える多額の融資などはこの法の適用を受けます。ファイナンスリース事業者では、1回の賃料が10万円を超える契約が該当します。クレジットカード事業者は、クレジットカードの契約締結に適用されます。
実際、銀行やクレジットカード会社などは犯罪収益移転防止法により、本人確認の方法が厳格化されることを自社のHPで何か月も前から明記しています。
例えばクレジットカードを作る場合、令和2年3月31日までは運転免許証のみで発行されていましたが、今後は運転免許証のほかに保険証や住民票や公的料金領収書のコピーなどもう一枚必要書類が必要になります。
保険証は身分証明書として大きな効力を発行しますが、顔写真がないためどこかに落としてしまったり盗まれてしまうと悪用される心配があります。しかし、法律が厳格化し保険証だけでお金を借りることはかなり難しくなります。
また、金融機関も犯罪には神経をとがらせているので第三者が他人の保険証を悪用するのは容易なことではありません。お金を借りる場合は収入や職業だけでなく
を厳しくチェックします。また、電話での在籍確認もしっかり行われるため嘘をつきとおすことは至難の業です。万が一、本人確認書と違う人にお金を貸してしまうと違法行為となり、大きな損害を受けるので金融業者も審査は慎重に行っています。
また、たとえ第三者があなたの保険証を本人確認書類として提出してお金を借りた場合でも、あなた本人が契約を結んだわけではないので、支払いをする義務はありません。
保険証の紛失に気づいたら、すぐに警察に届け出ましょう。届け出を出しておけば、身に覚えのないカードローンなどの請求があった場合、届け出が証拠となり支払い義務がないことを証明することができます。また身に覚えのない請求があった場合は消費者生活センターに相談しましょう。
請求書は捨ててはいけません。これも大切な証拠となります。
金融機関も不正な手続きで融資を行えば罰則が適用され、お金を回収することが不可能になります。
保険証はお金を借りる時に本人確認書類として重要な役割を果たしてくれますが、その一方、他人の手にわたり悪用されると、思いもかけない大きなトラブルに巻き込まれることでもあります。
とくに闇金などの違法金融業者に保険証が渡ってしまった場合、個人の力で対処できないトラブルに巻き込まれる可能性があります。先述した通り、保険証が第三者に利用される可能性は低いものの、保健所には住所と勤め先が明記されています。
最近の保険証はカード型になり、小型化したことで紛失しやすくなっています。万が一なくしてしまった場合は、すぐに警察に届け出ましょう。
また、再発行してもらう場合は可能であれば保険証番号を変更してもらうなどできる限り自衛するようにしましょう。