総量規制とはどんな法律なのか?銀行は対象外ではなくなった?

最近は銀行でお金を借りにくくなったといわれています。以前は専業主婦やフリーターでもかりられたのに、今は審査すら受け付けてくれないことも珍しくありません。これは、総量規制という金融業にかかわる法律が大きくかかわっています。

総量規制は本来銀行以外の金融業者に適用される法律ですが、ここ数年は銀行も総量規制に準じた貸付を行っています。

総量規制は消費者の生活を守るために作られた法律です。お金が借りられず頭を抱えている人は、総量規制の内容をもう一度見直してみましょう。借りられなかったことは最終的にはあなたの生活を守ることになった可能性があるのです。

そもそも総量規制とは?何を目的として作られたのか

総量規制は貸金業法の一部で、消費者金融や信販会社など金融業を営む企業が必ず遵守しなくてはなならい法律です。銀行も金融業ですが銀行法という貸金業法とは別の法律が適用されます。

総量規制は2006年に成立し、企業側に準備期間を与えるために5段階に分けて施行されてきました。2010年6月18日ですべての規定が施行完了となっています。

総量規制制定前、法律上の金利は2種類の上限がありました。

①利息制限法の上限金利(超過すると民事上無効):貸付額に応じ15%~20%
②出資法の上限金利(超過すると刑事罰):改正前は29.2%(現在の上限は15%~20%)

利息法の上限と出資法の上限で約9%のひらきがあったわけですが、これはグレーゾーン金利とよばれていました。20%以上の金利で貸し付けると民法では認められなくても、出資法では許容範囲内なので、刑に問うことは難しかったのです。

1990年代は多重債務が社会問題化しており、自己破産件数が急激に増えていた時でもありました。原因の一つに高金利なグレーゾーンの放置があるとみられ、改正を要求する機運が高まりました。一方、サラリーマン金融(通称サラ金、のちの消費者金融)の無理な貸付や闇金業者の横行も問題視されるようになり、こちらの規制を要求する声も同時に高まってきたのです。

これらの声を受けて貸金業法が大きく改正されることになりました。

利息制限法と出資法の上限金利を統一したほか、個人の借入可能額を1年の収入の1/3迄に限定することも規定されました。

これが総量規制です。総量規制は2010年から施行となっています。

総量規制が施行されたことにより、業者側が年収の1/3を超える貸付が発覚した場合は処罰の対象となります。また、貸し付ける際には顧客の収入状況を確認する義務も負うことになり、貸付前に審査が行われるようになりました。総量規制が施行された後、自己破産件数は減少していきました。

総量規制は銀行以外すべての業者からの借入合計額が対象

総量規制が導入により、借入上限額は年収の1/3になりました。たとえば年収300万円の人の借入上限額は100万円までということになります。

ここで注意しておきたいのは、1社からの借入額だけでなく、すべての業者からの借入額の合算した額が適用対象になるということです。

例えば、A社から借りた額が20万円、B社から借の借入が30万円だったとすると、残りの借入可能額は50万円となります。

ただし、これは理屈の上での借入可能額で、金融業者の審査次第では借入可能額が減額する可能性があります。必ず上限ぎりぎりまで借りられるということではないので注意が必要です。

また、保証人・連帯保証人をつける場合でも借入上限額は変わることはありません。

高額な借入には収入を証明する書類提出が必須

金融業者は貸す前に顧客の収入状況を把握することが義務付けられています。50万円以上の高額な借入をする場合、または複数の業者から合算して100万円を超える借入がある場合は収入を証明する書類が求められます。

①源泉徴収票
②支払調書
③給与の支払明細書
④確定申告書
⑤青色申告決算書
⑥収支内訳書
⑦納税通知書
⑧納税証明書
⑨所得証明書
⑩年金証書
⑪年金通知書

証明書はいずれも直近の期間にかかるものを提出することになります。直近の期間は書類によって違ってきますから、審査を受ける前によく確認しましょう。また、借入希望額が提出義務のある金額に達していなくても、場合によっては書類の提出が求められることがあります。

CMも規制対象に。消費者金融のCMが減った理由とは

規制の対象になったのは金利と借入金額だけではありません。総量規制の枠組みではありませんが、CMにも規制が求められるようになりました。

1990年代~2000年代前半は消費者金融のCMが夜昼構わず頻繁に流されていました。かわいい犬などを使ったカジュアルな雰囲気のものが多い上、「最短10分で借入可能!」「無職でもOK」などのうたい文句がおどっていたことから、不必要な借入を助長すると非難され、貸金業法では広告規制も定められることになったのです。

現在の規定では返済能力のない人の借入をあおる説明や文言を禁止しています。上記のような文言は誇大広告として処罰の対象となります。金利の幅が5%~20%だった場合、5%の金利のみを過剰に宣伝することも禁止です。消費者金融はキャンペーンで無利息期間を設けているところもありますが、この期日もしっかり明記する必要があります。

さらに社名や登録番号、金利も表示必須となり、表記する際の文字の大きさにも細かい規定が設けられました。金利は小数点以下の数字も正確に表示する必要があります。ただ、CMの最後にほんの数秒だけしか流さない業者が多く、もっと改善の余地があるように思いますが…。

テレビCMは放送する本数、時間帯にも規制があります。朝7時~9時、17時~22時の間は放送が禁止となりました。22時~0時の間でも50本以内に収めることが定められています。業界の自主規制としては1社で月100本以下となっています。

総量規制対象外の貸付もある。その種類とは

顧客の利益保護に支障をきたさないとみなされる貸付は「除外貸付」に分類され、総量規制にかかりません。除外貸付となるのは

①顧客に一方的に有利となる借り換え
②借入残高を段階的に減少させるための借換え
③顧客やその親族などの緊急に必要と認められる医療費を支払うための資金の貸付け
④社会通念上 緊急に必要と認められる費用を支払うための資金(の貸付け
⑤配偶者と併せた年収3分の1以下の貸付け
⑥個人事業者に対する貸付け
⑦新たに事業を営む個人事業者に対する貸付け
⑧預金取扱金融機関からの貸付けを受けるまでの「つなぎ資金」に係る貸付け

のいずれかに当てはまる貸付です。住宅ローンや、自動車ローン、高額医療費、返済の負担を軽減させるためのおまとめローンなどが該当します。

ただし、借入前には必ず審査があり、借り手の経済状況によっては希望通り借りられない可能性もあるので注意が必要です。また、クレジットカードでのキャッシングは総量規制の対象ですが、ショッピング枠は対象外です。

ショッピング枠は貸付ではなく、立替という扱いになるためです。

総量規制対象外の銀行のカードローンも自主規制で審査が厳しくなった

金融業でも銀行は別の法律にのっとって営業しているため、本来は総量規制対象外なのですが、最近は銀行のカードローンも業界の自主規制が厳しくなり、審査に通るのがむずかしくなってきました。

ここ数年は消費者金融などは規制により貸付条件が厳しくなった一方、銀行のカードローンの貸付総額は増える一方でした。総量規制の対象外ということで年収1/3という縛りがなく、さらに長引く不景気で収益が伸び悩んでいたため、企業貸付に代わるあらたな収入源として目を付けたのが個人向けカードローンだったのです。

形ばかりの審査をしただけで、返済不可能な額を平気で貸し付ける銀行が多くありました。中には生活保護を受けている人や無職の人にも貸し付けてる銀行さえあったのです。銀行の無理な貸付が原因で減少傾向にあった自己破産件数が再び増え始め、これを警戒した日弁連が金融庁や銀行に意見書を申し入れる事態になりました。これを受けて銀行も厳しい自主規制に乗り出します。

現在では銀行のカードローンも年収1/3を超える借入はほぼ不可能です。

また、夫に一定の収入があれば専業主婦でも借入を認める銀行もありましたが、現在は無収入では借入はほぼできなくなっています。

自主規制前は300万円を超えなければ提出を求められなかった収入証明も50万円以上の借入から義務付けるようになり、やはり総量規制に準じた貸付となりました。広告も安易な借り入れをあおる文言は消えています。

年収1/3を超える貸付は悪徳業者!かかわってはいけない

総量規制は消費者の生活を守るために作られた法律です。

ネットでは、他社からの借り入れがあっても即日融資OKなど簡単に借り入れができることを売りにする貸金業者の広告が多数見受けられますが、こんな業者は間違いなく闇金です。

借り手からしゃぶりつくすことしか考えていません。また、一度闇金から借りてしまうと個人情報がほかの闇金の手に回ってしまい、次から次へと無茶な貸付をしてくるため、あっという間に生活が破綻してしまいます。

借りられない場合は、ほかの手立てを考えるか返済のめどが立つ収入を得てから借りるようにしましょう。