若者にお金がないのは今に始まったことではありません。しかし現在、若者にお金がない理由は不景気や雇用形態など彼ら自身ではどうしようもない面が多くあります。就職すれば給料が右肩上がりの時代とは状況が違います。
若者が消費をしないことが経済が回らない理由のように言われることもありますが、彼らには彼らの事情があるのです。若者の消費動向を見れば日本の経済に何が必要なのかがわかってくるかもしれません。
働き盛りの40代・50代に比べて20代の若者にお金がないのは当たり前です。まだ学生の若者もいますし、社会人になって間もないので収入も多くは望めません。また、社会保障費や消費税が上がっているので給料のもらう額は同じなのに支出が増えるため、手取りは減る一方です。
しかし、お金がないといろいろ不自由なことが多いと思いますが、当人たちはそれほど苦痛ではないようです。
というのも、お金に余裕のある40代・50代に比べてお金のない若者の方が生活の満足度が高いという調査結果がでているのです。これはどういうことでしょうか?40代・50代の満足度が低いのは多くが家庭を持って、自由に使えるお金は意外と少ないというのも大きいでしょう。
20代の若者がお金がなくても生活に満足できている理由は、稼いだお金のほとんどを自分の好きなように使えるということが大きいようです。また、若者の生活満足度が高い理由は消費志向が昔とおおきく変わってきているということも関わってきています。
今の若者の親世代、バブルを謳歌した50代は車やブランドの洋服など、高級なものを買うことがかっこいいとされてきた世代です。しかし、バブルははじけ、モノに消費する傾向は縮まっていきます。
今の若者は生まれたときから不況の中にいたのです。雇用は非正規や派遣など不安定な携帯が多くなり、ボーナスももらえません。当然年収は低いままですから、モノに消費する意欲がは育つはずもありません。
ではお金がなくても生活満足度が高い若者たちの満足度が高い理由はどこにあるのでしょうか。現代の若者横のつながりを大事にするといわれています。実際、何にお金を一番使うかという質問は交際費が大半を占めたというデータがあります。
こうしてみると、若者は消費意欲がないということではなく、高価なモノを買うことに興味がないというほうが正しいようです。
そのかわり、形がなくても思い出として記憶にのこるもの、自分の内面を豊かにする経験にお金をかける傾向が強いことがわかります。
そしてその選択肢は昔には比べ物にならないくらい多様化しています。若者の間で爆発的なブームが起きにくいのはこうしたことが原因しているのでしょう。
車や洋服が欲しいという若者もいますが、昔のようにステイタスシンボルとしてはやりの型の車を買うということではなく、あくまで実用的な道具として車が欲しいということのようです。洋服でも、その洋服そのものが欲しいというよりは友達とおそろいのものを着ることで盛り上がることに満足を得ているようです。これを同調消費といいます。
また、現代の若者は意外と貯蓄への意欲も高めです。今の若者はお金がないのではなく使わないだけ、という説を裏付けるデータもあります。
数年前のある会社の調査では、20代の若者は毎月2万円~5万円貯蓄している人が37%もいたという結果が出ています。月6万円~10万円も貯蓄している人も23%にのぼりました。総貯蓄額でみると101万円~300万円ためている人が全体の18.7%、301万円~500万円の人が15.7%、501%~1000万円ためている人が16.3%いるという結果が出ました。持っている人は意外と持っているようです。
意外ですが、現代の20代は現金主義者も多いようです。クレジットカードを一番使う世代は60代で、100人中35人が支払いにカードを利用していました。一方、20代は支払いにカードを利用する人は100人中19人しかいませんでした。現代の若者はしっかりした金銭感覚を持った人が多いようです。
カードを持たない若者の中には、ブラックリストに載っているためにカードを作りたくても作れない若者も多い王です。彼らは学生時代に奨学金を借りています。しかし、正社員の仕事につけず、思うような収入が得られないため奨学金を滞納し、ブラックリストにのってしまったのです。
奨学金を滞納している人は300万人以上いるといわれています。奨学金は4年生大学であれば毎月5万円~10万円の奨学金を支給されます。返済は毎月1万円~2万円を15年ほどかけて返すことになります。しかし正社員になれず、低い年収で毎月これだけの額を返していくのはかなりの負担です。
現在、親と同居して、結婚への意欲も薄い若者が増えているといわれていますが、こうした事情から自立したくてもできないという事情も大きいのでしょう。若者は恋愛をめんどくさがる傾向があるといわれていますが、借金があって貯金もままならない状況では、めんどくさい以前に二の足を踏んでしまうのでしょう。
企業は若者の消費意欲を刺激するために躍起になっているところが多いようですが、あまりうまくいっていないようです。
これは企業の中心である40代・50代が現代の若者の消費志向の変化をとらえきれていないことが大きな理由と考えられます。
彼らが若かったころはブランド物や高級車など「見栄を張るための消費」が中心でした。
しかし今の若者の価値観はバブル時代とは対極にあるといっていいくらいに違っています。彼らは高級車など人に自慢するための買い物には興味がありません。自動車メーカーは見た目のよい車を作ることに熱をいれているようですが、それは見当ちがいです。
飲酒メーカーも若者の嗜好をとらえるのに苦労しているようですが、
今の若者はお酒そのものに魅力を感じるのではではなく、友人たちと経験を共有することに意義を見出しているのです。
新しい種類のお酒を出しても爆発的なヒットにつながらないのはそこに原因があるようです。
現代の若者を情けないと嘆く中高年が多いようですが、実は現代の若者のほうがお金に関しては堅実で、少ないお金でいかに有意義に過ごす術をよく知っているという側面もあるのです。
中高年以上の世代からは自己責任という言葉がよく出ますが、彼らにお金がない理由は彼ら自身のせいではありません。
経済の低迷や雇用形態など自分ではどうしようもない様々な理由で稼ぎたくても稼げないのです。
若者が消費しない、と嘆く前になぜ彼らがお金を使わない、あるいは使えないのかを考えた方がいいでしょう。